ブラッシング習慣の変化

最近は朝起きたときよりも、朝食後に歯をみがく人が増えているという調査結果が公表されました(ライオン調査)。1973年に歯をみがくのは70%の人が「起床後すぐ」だったのが、30年後の2003年には27%と大きく減少しました。替わりに「朝食後」は1973年の21%から2003年の73%と大幅に増加しました。昼食後に歯をみがく人は2003年には32%で8倍に増加しました(1973年は8%)。その結果、2003年には1日に歯をみがく回数も2回と3回以上があわせて94%となっています。厚生労働省が6年ごとに行っている歯科疾患実態調査でも特に3回以上みがくという人が増加しています。 人間は昔から歯痛には悩まされてきました。禅宗の僧は毎朝、歯の清掃と口を漱ぐことが戒律として決められていました(律宗等)。江戸時代には将軍が三河の吉良の庄、後には赤穂の塩で総楊枝を使い、毎朝 歯をみがいていたという記録が残っています。このことが忠臣蔵の吉良家(三河)と浅野家(赤穂)の対立の背景にあったとする話もあります。また「お歯黒」が中世の公家や大名(お歯黒大名、駿河の今川義元)、江戸時代の既婚の女性の間でおこなわれていたのも むし歯予防という面があったことも事実でしょう。

しかしこれらはいずれも朝起きたときに習慣的におこなわれていたものです。夜寝ているときにはだ液の量も減少し、朝起きたときに口が粘つくなどの不快症状があるのを一掃したいという考えもあったと思います。これに対して現在ではプラークコントロールの考えが浸透してきて、朝食後にみがく人が増えてきていると思われます。折角、1日に3回以上ブラッシングする習慣が定着してきたのですから、むし歯予防に、歯周疾患予防により効果のあるブラッシングを行いましょう。個人個人の歯並びやかみ合わせも違うのですから、むし歯になりやすいところ、歯肉炎になりやすいところは各々違います。ブラッシングの癖もあります。歯科医院のスタッフの協力で自分にあったブラッシングの方法を見つけていただき、定期健診でチェックし、ブラッシングで及ばないところはプロのクリ−ニングで補いましょう。みなさんの大切なブラッシングの時間がお口の病気の予防により効果的になるよう願っております。
  

これは国立国会図書館に所蔵されている「お歯黒」を付けているところを描いた浮世絵ですが、昔の人も歯には苦労していたんですね。お歯黒を付ける時はにおいが強いので朝 家族が起きる前に行なったそうです。